電通事件(平成12年 3月24日 最高裁判例)

残業過多の影響で、メンタルダウンに陥っている従業員の方が多いのが実態です。それゆえに、会社側も普段から労務管理等をきちんとしておかないと法令違反となり、法令を知らないままでいることは許されません。今回は過労自殺が企業の安全配慮義務違反とした最高裁判所の判例(電通事件)をご紹介します。

【概要】
・電通に入社した男性社員A(当時24歳)が平成2年7月以降長時間残業が恒常的に行われていたことから、うつ病を発症し、自殺に至ったことから、遺族である両親が電通に損害賠償を求め、訴えた。
・男性社員Aの業務内容は企業がラジオ番組の提供主となる形で企画書等を用いて勧誘することと企業が宣伝の為に主宰する行事等の企画立案及び実施することであった。
・残業をする際は所属長の事前申請の基、許可が必要であったが、実際は事後申請どころか、残業時間の過少申告も常態化していた上、時間外・休日労働の労使協定(36協定)で決められていた時間も超えていた。
・当初は業務に意欲的で、積極的に仕事をしていたことから、上司や業務上の関係者から好意的であったが、その後、深夜時間帯まで残業することが多く、遂には帰宅しない日も増えたことから、両親から有休を取ることを勧められた。しかし、男性社員Aは自分が休んでしまうと代わりの者がいない、かえって後で自分が苦しむことになる、その上、有休を取りたい旨を上司に言ったことものの、上司からは仕事は大丈夫なのかと言われてしまったことから、応じなかった。平成2年度中に有休10日付与されたが、取得したのは0.5日であった。
・上司からの評価は変わらず高かった。平成3年7月以降班長付きであったのが、独立の形となったものの、睡眠不足に陥り、元気が無く、顔色も悪い状態となった。8月になると、上司に「自分に自信が無い、自分で何を話しているのか分からない、眠れない。」と訴えた。しかも、長野での取り引き先企業の行事実施の際、異常行動も見られた。帰宅後、自殺した。

【判決】
二審(東京高裁)差し戻し→和解
(理由)
・電通に勤務する男性社員Aが長時間に渡り残業を行う状態を1年余り継続した後に、うつ病にかかり、自殺した場合において、男性社員Aは、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていた為、継続的に長時間に渡る残業を行わざるを得ない状態になっていたものであった。つまり、業務と自殺との間には長時間残業によるうつ病の発症、うつ病罹患の結果としての自殺という一連の連鎖が有ることから、因果関係は有る。
・男性社員Aの上司は、男性社員Aが業務遂行の為に徹夜までする状態にあることを認識し、その健康状態が悪化していることに気付いていながら、男性社員Aに対して、業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、その業務量等を適切に調整する等負担軽減の措置を採らず、その結果、男性社員Aは、心身共に疲労困ぱいした状態となり、それが誘因となって、うつ病になり、うつ状態が深まって動的、突発的に自殺するに至った。つまり、注意義務・安全配慮義務違反である。ゆえに、電通は民法に基づき、男性社員Aの死亡による損害を賠償する責任を負う。
・男性社員Aの真面目で、完璧主義、責任感が強いといううつ病の親和的性格や、同居の両親が男性社員Aの勤務状況を改善する措置を講じなかったからといって、男性社員Aの個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格を損害賠償額の決定にあたり、心因的要因として酌めない。つまり、二審の東京高裁での損害賠償額の減額は違法である。

会社側もその様な従業員の方がいらっしゃる場合、申し出を待つのではなく、率先して配慮するように心掛けましょう。また、その上で、就業規則を1度見直してもよろしいかと思います。もし、不安でしたら、社会保険労務士にご相談することをお勧め致します。

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