メンタル関連の自殺も後が絶ちません。ハラスメントだけでなく、長時間残業等もメンタルダウンにつながりかねません。会社側も従業員の働く時間をきちんと把握し、業務を分担し合う等工夫し、配慮をしないと、従業員本人どころか、そのご家族からも訴えられかねません。今回は最近の最高裁判所の判例より静岡県警事件をご紹介します。
【概要】
・警部補Aは平成15年4月静岡県警に採用され、下田警察署中央交番の交番長として勤務していた。
・日勤(午前9時~午後5時45分(昼休憩1時間)と当直勤務(午前9時~翌日午前9時まで(昼休憩1時間・夜休憩2時間半・仮眠時間5時間を含む)を行うことが有った。
・平成23年4月頃から中央交番管内で連続窃盗事件が発生した為、警部補Aは通常の勤務時間の他、夜間捜査や非番捜査をはじめ、自主的に見回りをしている。これについては、時間外勤務実績報告書に記載の上、地域課長に提出していた。
・平成23年11月、警部補Aはオランダでの海外研修に選出され、事前研修や英語でのプレゼンテーションの準備等にも負われていた。
・平成24年2月以降、警部補Aは職場実習生の指導担当の指名を受け、従事。しかも、年度末の異動に伴う引き継ぎ業務等で業務量が増えた。
・警部補Aの自殺前6か月間における1か月毎の残業時間が自殺直前から遡って、43時間~112時間であった。しかも、自殺直前の1か月の間に14日間連続で働き、1日の週休日を挟み、再び自殺当日まで14日間連続で働いた。おまけにそれぞれの連続勤務には拘束時間が24時間に及ぶ当直勤務がそれぞれ5回含まれ、当直明けの非番日にも平均5時間42分の勤務を行なっていた。
・警部補Aは平成23年12月頃、ストレスチェックを受けた所、総合評価が最低評価(E判定:かなり悪い)であったことから、地域課長にその旨を伝えたものの、何も配慮してもらえなかった。
・警部補Aは遅くとも平成24年3月上旬に、うつ病エピソードを含む精神疾患を発症し、その後自殺した為、そのご家族(妻子・父母)が提訴した。
【判決】
2審(広島高裁)差し戻し→警部補Aの遺族勝訴
(理由)
・警部補Aの上司(署長・副署長・地域課長)らは、警部補Aが、連続窃盗事件が発生している交番の交番長を務めつつ、職場実習指導員に指名され、海外研修の参加者にも選出されたことを把握している立場にあった上、勤務日誌、時間外勤務実績報告書の提出も受けていたものであり、地域課長は、警部補Aがストレスチェックで最低評価となったことを知っていた。それなのに、警部補Aの上司らは警部補Aに業務の負担軽減をする具体的措置を講じていない。
・静岡県警は警部補Aの業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して、警部補Aがその心身の健康を損なわないよう注意する義務を負っていたのに、怠ったことから、警部補Aがうつ病を発症して、自殺に至ったと言える。ゆえに、国家賠償法に基づく損害賠償責任を負う。
人の生命を粗末にしないで欲しいと日々願うものです。